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Topics 004
静岡県熱海市伊豆山の土石流災害

 伊豆山土石流災害

源頭部LIVE映像(国交省)
(ANNnewsCH 2021/07/04)
(朝日新聞 2021/07/04)
土砂災害危険度分布(2021/7/3 06:20)
網代時間雨量(2021/7/2~7/3)土石流経路と7月6日撮影空中写真(国土地理院)
 2021年7月3日午前10時半頃、熱海市伊豆山で土石流が発生しました。この土石流により、被害棟数128棟(135世帯)、死者24名、行方不明者3名(8月22日熱海市発表)の大惨事となりました。
 今回の災害で犠牲になった方々のご冥福をお祈りしますとともに、被災された方々にお見舞い申し上げます。
 弊社では、この災害に関連する情報を整理したサイトを7月4に立ち上げました。今後も情報を取集し、サイトを随時更新していきます。このサイトが、被災状況の把握ならびに今後の復旧に少しでもお役に立てれば幸いです。

 伊豆山の地質概説

地質図およびハザードマップ
大規模盛土造成地マップ(静岡県)
 箱根火山群は、複数の小~中型複成火山の集合体と考えられています(日本地質学会,2007)。23~13万年前に外輪山火山付近に小型カルデラ群が形成されます。その後、カルデラ内で前期中央火口丘の活動が起こり、8~4万年前には再び爆発的な噴火を伴って山体中央郎にカルデラが形成されました。完新世(約1万年前)になっても、神山、二子山、冠ヶ岳などのマグマ噴火がありました。3000年前の冠ヶ岳の活動では、神山岩屑なだれを発生させています。なお、被災地伊豆山には熱海周辺に点在する流紋岩単成火山の一つ伊豆山デイサイトが局所的に分布しています。形成時期は30万年前よりも若いと考えられています。
 被災地の上流部は、箱根火山群では一番古い40万~25万年前の湯河原火山城山溶岩類(安山岩-玄武岩質安山岩溶岩および火砕岩)とされ、下流部は山地緩斜面堆積物(長径数~10数cmの円~亜角礫からなる不淘汰な火山灰質の礫層)とされています。
 源頭部の崩壊現場では、黄褐色に見える部分は地山の粘土化した火砕岩で、黒褐色に見える部分は盛土だそうです。地山と盛土の境界部分には湧水が認められます。

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地質図は、任意の箇所をクリックすると、地質情報がポップアップします。なお、図や写真も拡大します。

 土石流沿いの地形

≪地形診断マップの使い方≫
 地形画像診断は各種地形情報を勘案して行います。下記オーバーレイの中から必要な情報にチェックを入れて重ね合わせます。上にあるほうが優先されますから、右横の両矢印(up/down)をドラグして順序を入れ替えてください。透明度は横バーで自由に変えられます。回転・傾動もできます。(Shift+drag:回転・ズーム、:正常方向復帰、Alt+drag:傾動、:全画面表示、Esc:復帰、:著作権・凡例表示、:地図選択)
 土石流は標高400m付近で発生した崩壊を起点とし、標高200m付近まで南東方向に20~30m程度の幅で直線的に約900m1)流下、流れを南に変え300m1)進み、標高150m付近で幅が80~90mとなり、南東方向に750m1)で海に達しています。土石流は、標高差400m、約2㎞の区間を流下しています。特に、標高200m以下の区間では、多数の民家を巻き込み、標高80m付近で東海道新幹線、標高70m付近で東海道本線のそれぞれ橋梁の下を通過、標高55m付近の逢初橋付近で溢れて国道135号を塞いでいます。
1) いずれも図上で計測した直線距離
崩壊直後の源頭部3Dモデル(拡大・回転します)(鈴木雄介氏提供)
源頭部CS立体図の3Dモデル(拡大・回転します)

 土石流発生源の崩壊メカニズム

 今回の土石流は、豪雨に伴い源頭部が崩壊し下流の土砂を巻き込んで発生したものです。ここでは、土石流発生源となった崩壊のメカニズムについて、素因と誘因に分けて考えてみます。

崩壊の素因

 静岡県は、2019年の崩壊前と崩壊後のデータとの差分から、土量変化(崩壊土量)を算定・公開しています。その後、国土地理院は2009年・2019年、崩壊後の3時期の地形差分から、地形変化(図1)を示しています。
図1 3時期の地形変化図2 土石流崩壊源周辺の崩壊前の赤色立体図
 と豪雨時に推定される雨水の表面流出経路
 これらの図を読み解くと、急な谷の斜面上に盛土が行われたこと、崩壊した部分は 2009年以降の盛土とピッタリ一致すること、の 2点がわかります。崩壊の素因は、急な谷の源頭部に施工された盛土と判断されます。この盛土は、静岡県によれば、建設残土を不法かつ不適切に施工されたことが指摘されています。
 一方、崩壊頭部には未崩壊の盛土が不安定な状態で残っています。この部分が崩壊すると、新たな土石流を引き起こす可能性が懸念されます。

崩壊の誘因

 崩壊の誘因は、崩壊前までに降った降雨です。小杉(2021)は、未経験降雨指数を用いて今回の降雨を解析し、土石流発生直前の2021年7日10時には「昭和 36 年梅雨前線豪雨」以来の約 60 年ぶりの豪雨であった、と指摘しています。
 公開された崩壊前の赤色立体図(図2)上で崩壊源を含むA流域(図2)を確認すると、崩壊源より上流部の流域面積が狭いことがわかります。このため約 60 年ぶりの豪雨であったとしても、この小流域からの雨水だけで崩壊が発生したとは考えにくいのです。
 隣接するB流域の雨水の流下経路をみると、下流部を堰き止めるように盛土と道路があります。これにより上流域のB流域の雨水は、A流域側の右岸に集中しています。流域境付近は人工改変されて境界が不明瞭となっており、豪雨時に流域境を越えてA流域の盛土付近に流れ込んだ可能性があります。
 崩壊の誘因は約 60 年ぶりの豪雨です。これに、A流域崩壊上流部だけでなく北東側のB流域上流部の雨水による影響が指摘されます。今後この点も十分な検証が必要です。
 これら予察的な検討は、2021年7月16日現在の公開情報から行ったもので、今後変更されることがあります。

3Dモデル(静岡県点群サポートチーム作成)

参考文献
  1. 北村晃寿(2021), 2021年7月3日に静岡県熱海市伊豆山地区で発生した土石流の速報. 静岡大総合防災センター, 4pp.
  2. 小杉賢一朗(2021), 熱海市伊豆山の土石流を発生させた降雨の特徴について-第1報. 京大農学研究科ウェブサイト.
  3. 小杉賢一朗(2021), 伊豆山土石流の降雨の特徴-第2報(7/6修正) スネーク曲線を用いた解析結果. 京大農学研究科ウェブサイト.
  4. 小杉賢一朗(2021), 伊豆山土石流の降雨の特徴-第3報 過去の豪雨との比較. 京大農学研究科ウェブサイト.
  5. 日本地質学会(2007), 国立公園地質リーフレット1「箱根火山」. 日本地質学会, 1葉.
  6. 及川輝樹・石塚 治(2011), 地域地質研究報告 5万分の1地質図幅 熱海. 地質調査総合センター, 61pp.
  7. 令和3年7⽉静岡県熱海市で発⽣した⼟⽯流災害に係る緊急調査団」(2021), (公社)砂防学会 令和3年7⽉静岡県熱海市で発⽣した⼟⽯流災害に係る緊急調査報告(速報). 砂防学会, 15pp.
  8. 竹内圭史・及川輝樹・斎藤 眞・石塚 治・実松健造・駒澤正夫(2015), 20万分の1地質図幅 横須賀(第2版). 地質調査総合センター, 1葉 + 8pp.
  9. (), . , Vol., No., p..
  10. (), . , Vol., No., p..
  11. (), . , Vol., No., p..
  12. (), . , Vol., No., p..

参考サイト

初出日:2021/07/04
更新日:2021/09/22