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緊急:仁徳天皇陵、地すべりで崩壊の危機

仁徳天皇陵空中写真(国土地理院)産総研シームレス地質図(黒太線:上町活断層)国土地理院都市圏活断層図
 2019年大阪府南部に分布する百舌鳥(もず)古市(ふるいち)古墳群が世界遺産に登録され、話題を呼びました。4世紀後半から5世紀後半にかけて築造された古代日本列島の王たちの墓群です。中でも百舌鳥エリアの仁徳天皇陵(大仙古墳)は、墳丘長486m、濠を含めた全長は840mもあり、日本最大規模です。また、御陵の北西には活断層である上町(うえまち)断層が走っているのでも有名です。
 2020年10月弊社CEOの原口が大阪市立大学の上町断層巡検で学生を連れて仁徳陵を訪れました。その際、ガイドさんの見せてくれた地形図に驚愕します。
地すべり地形判読図(原口強原図)
明瞭な地すべり地形が読み取れたのです。
 まず前方墳部では、方墳全体を2分するように①②のすべりが認められます。後円墳部では、③④⑤のすべりが認められます。③は下端部の小規模な崩壊、④は上部の表層崩壊、⑤は大規模なすべりです。かなり変位が進行していて、癌に例えるとステージⅣくらいでしょうか。大きな地震や異常降雨があると、古墳の損傷だけでなく、大きく崩れた土砂が環濠に滑り落ち、周囲の民家に重大な影響を与えるでしょう。高さ70mの盛土が一気に滑ると、局所的ですが数mの津波が発生します。ここは空中写真で分かるように市街地に立地しています。人的被害は免れません。早急な調査と対策が求められます。

<地図類の使用法> 地形図・空中写真・地質図および図面すべてをFOSS(Free Open Source Software)のOpenlayersで表示してみました。
:全画面表示,:著作権・凡例表示;
空中写真はShift+dragで回転・ズームします(:正常方向復帰)。
地質図は、任意の箇所をクリックすると、その地点の地質情報がポップアップします。また、Openlayersのロゴをクリックすると、5万分の1地質図幅と切り替えられます。

参考文献
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参考サイト

初出日:2021/03/01
更新日:2021/03/09