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令和2年7月豪雨による熊本県芦北町田川の土砂災害

 令和2年7月豪雨災害と芦北の地質

 2020年7月3日~4日、鹿児島県長島→熊本県芦北→熊本県人吉と線状降水帯が次々と襲いました。後に気象庁が「令和2年7月豪雨」と命名します。水俣ではこの間の累計雨量513.0mmを記録、例年の7月平均月間降水量403.6mmを大きく上回るものでした。そのため、人吉など球磨川流域では大規模な洪水があり、芦北地方では土砂災害が発生します。熊本県の2021年3月3日付けの発表によれば、全県で死者65名、行方不明2名の人的被害があり、住家被害としては、全壊1,490棟、半壊3,098棟、床上浸水294棟の被害がありました。その他、鉄道・道路・橋梁なども甚大な被害を受けました。芦北管内では死者14名、行方不明1名、全壊住家76棟、半壊住家936棟でした。
 上述のように芦北地区では土砂災害が各地で発生しました。この地域の地質は主としてジュラ紀付加体のメランジュ相と整然相からなりますが、海岸部には古い時代の蛇紋岩コンプレックスや変成岩類も分布します(斉藤ほか,2010)。調査地の田川では、ジュラ紀付加体整然相の砂岩の上に破砕されたチャートが載り、その間に厚さ20cmの黄白色粘土層を夾みます。宮縁・鳥井(2021)によれば、これは断層粘土(ガウジ)で、砂岩もチャートもカタクレーサイトだとのことです。つまり、断層破砕岩の強風化部が崩壊したことになります。なお、一番右のハザードマップを見てください。ハザードマップで危険個所とされているところと、実際に崩れたところとは、沢一筋違っていました。
田川崩壊地全景(宮縁・鳥井,2021)
芦北観測所降水記録(砂防学会,2020)
XRAINを用いた12時間積算雨量(防災科研,2020)
大雨警報危険度分布(2020/07/04 06:30 気象庁)各種地質図(:主な崩壊地)各種ハザードマップ(国交省)
<地図類の使用法> :全画面表示,:著作権・凡例表示,地図切替; シームレス地質図表示は縮尺20万分の1以下,表示中はクリックでその地点の地質情報ポップアップ。
 なお、図面もクリックすると拡大します。


 地形画像診断

≪地形診断マップの使い方≫
 地形画像診断は各種地形情報を勘案して行います。下記オーバーレイの中から必要な情報にチェックを入れて重ね合わせます。上にあるほうが優先されますから、右横の両矢印(up/down)をドラグして順序を入れ替えてください。透明度は横バーで自由に変えられます。回転・傾動もできます。
(Shift+drag:回転・ズーム、:正常方向復帰、alt+drag:傾動、:全画面表示、Esc:復帰、:著作権・凡例表示、:地図選択)


参考文献
  1. 地頭薗隆・伊倉万理・植 弘隆・大石博之・垣本 毅・木藤賢一・古賀省三・坂井佑介・坂島俊彦・篠原慶規・清水 収・田方 智・寺本行芳・鳥田英司・永谷直昌・中濃耕司・西脇彩人・平川泰之・福塚康三郎・水野秀明(2020), 災害報告 令和2年7月豪雨による熊本県の土砂災害. 新砂防, Vol.73, No.4, p.41-.
  2. 森下 淳(2020), 令和2年7月豪雨に伴う土砂災害について. 砂防と治水, Vol.53, No.5, p..
  3. 宮縁育夫(2021), 令和2年7月豪雨に伴う熊本県南部芦北町・津奈木町周辺の被災状況. 消防防災の科学, No.143, p.32-39.
  4. 宮縁育夫・鳥井真之(2021), 令和2年(2020年)7月豪雨によって熊本県南部で発生した斜面災害. 地学雑誌, Vol.130, No.1, p.107-116.
  5. 宮縁育夫・原口 強(2021), 令和2年7月豪雨による斜面災害と地形画像診断例. 日本応用地質学会2021年研究発表会講演要旨, 2pp.
  6. 斎藤 眞・宝田晋治・利光誠一・水野清秀・宮崎一博・星住英夫・濱崎聡志・阪口圭一・大野哲二・村田泰章(2010), 20万分の1地質図幅「八代及び野母崎の一部」. 地質調査総合センター.
  7. 清水慎吾・前坂 剛・増田 有俊(2021), SIP「線状降水帯の早期発生及び発達予測情報の高度化と利活用に関する研究」について. WESTERN JAPAN NDICニュース, No.63/64, p.10-17.
  8. (), . , Vol., No., p..
  9. (), . , Vol., No., p..

参考サイト

参考サイト:

初出日:2021/03/13
更新日:2021/08/22